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2014/08/26

欧文印刷株式会社を退職します はてなブックマークに追加

表題の通り、今月をもって欧文印刷株式会社を退職することになりました。勤続約13年半です。最後の仕事は、先週行われたAWS主催のイベント、「AWS ジャパンツアー 2014年 夏」での事例発表となります。



印刷会社が「独自開発」をする意味
印刷業界に長年いて、もっとも感じた事、それは「ピンチはチャンス」という事です。印刷業界そのものは大変厳しい状況にあります。従来の印刷需要そのものがどんどん無くなっていく現実があり、基本的に今までの事をそのままやっているだけでは衰退するだけです。この現実に対してどう乗り越えていくべきか。自分が所属していた欧文印刷は「自力で独自開発」を行う、という方針を打ち立てました。世の中に存在していなかった新しいモノやサービスを作りあげ、新しい市場を切り開いていく、というものです。そして、それはある程度、結果に出すことができました。

例えば、おかげさまで大変ご好評を頂いている商品「nu board(ヌーボード)」がその代表です。

印刷工場の担当者が、ルーチンワークとして「機械を回す」ということで終わっていれば、このような「紙をホワイトボードにする技術」なんて絶対に生まれていません。どれだけ安く、早く機械を回すか?という考え方は、製造業的には基本的な考えでありますが、そこだけに注力して体力勝負になってしまうのは得策ではありません。なぜなら、基本的に需要そのものが減っているので、必然的に価格競争に陥るからです。

しかし、現実問題「言うは易く行うは難し」というのも事実ではあります。そもそも「独自開発」というものは、すぐに効果があるものでもないですし、ましてや開発に失敗するかもしれません。しかし、欧文印刷はそこに価値を見いだして、現場のエンジニア(アナログもデジタルも)をサポートしてくれる会社です。そういう中で仕事をさせてもらった事は大変恵まれていました。自分自身、エンジニアとして成長をさせてもらった事に、大変深く感謝をしています。

印刷とWeb
私は印刷会社の中のソフトウェアエンジニアとして、いろんな事を手がけて参りました。そこを語りだすといつまでも終わらないのでやめておきますが(笑)やはり欧文印刷での仕事の中で、最も自分を成長させてくれたのが、ブログ製本サービス「MyBooks.jp」に携わった事です。このサービスの立ち上げから成長まで、当事者として8年間関われたことは、大変貴重な経験でした。ある意味、自分の子供みたいな気持ちです(笑)


本当に何もない所から、ただ「ブログは本になるんじゃないか?」という発想で始めたこのサービス、まさか国内の主要なブログと提携させていただき、かつサービス自体が8年も続くとは、当時は全く想像もしませんでした。これもサービスを使っていただいているお客様のおかげです。本当にありがとうございます。MyBooks.jpは、もちろん今後も継続的に発展して行きますので、乞うご期待です。

たかだか「ブログを製本する」と一口に言っても、本当に沢山の事が「前例のないケース」で、全てが手探りの状態でした。ブログデータをPDFに変換する組版エンジンの開発、写真などの収集、最適化技術といったものは当然として、Seasar2やRuby on Rails、Flexなど、その時代にあったWebフレームワークを積極利用したり、途中から「Amazonクラウド(AWS)」を利用して、一番のネックだった「サーバーインフラ」の問題を一挙に解決できるようになったパラダイムシフトを経験したり・・とにかく様々な経験をさせてもらいました。




しかし、MyBooks.jpは「製本サービス」です。つまり、印刷して製本して配送する、という製造の行程があります。私はシステムの担当であるので直接はタッチしておらず、これまであまり表立って話もしてこなかった事ですが、こちらも全てが初めての事でしたので、本当に大変だったと思います。そもそも当時は業界の常識として「本を一冊だけ印刷製本するなんてのはあり得ない話」でありました。ましてやB2Cサービスですから、受注数の変動も激しいので、そこをいかにして回していくべきか、今までの「常識」を全て覆さなければ到底なし得ない事をやってのけました。欧文印刷のオンデマンド製造部門は相当すごいですよ。ここまで一点一様のものを毎日大量に生産している印刷会社は無いと思います。

リモート勤務というワークスタイル
そして、やはり言及しなければならない事は、リモート勤務を認めていただいた事です。考えてみたらこれも「前例のないケース」ですから、欧文印刷がそもそも持っている風土にあっていたのかもしれませんね(笑)

リモート勤務開始は2011年の11月ですので、もうすぐ3年経ちます。その中で、MyBooks.jpのシステムリニューアルや、mixiさんとの連携によるサービスのヒット、なんて言う事がありました。どれも大変思い出深い出来事です。

リモート勤務の事に関してですが、ここにきて少しずつ認知度が上がってきたなぁ、という感じがします。実際にイベント等でお会いした方に「話を聞いてこういうワークスタイルを知った」と言われる事もありますし、中には実際に行動に移されてリモート勤務をやってます、という方もいらっしゃいました。これは個人的にもとても嬉しい事ですし、いろんなところでお話をしてきてよかったなぁ、と思うところであります。

特に思い出深いのは、2013年初頭の「エンジニアサポートCROSS 2013」と、同年10月の「北海道の楽しい100人」に登壇したことです。前者はASCII.jpさんに記事にしていただいて結構な反響をいただきましたし、その後IT系に限らず、様々なイベントや勉強会、メディアの取材等をいただいたきっかけとなりました。後者は、クラウド移住してきて2年が経過したタイミングでのお声がけで、個人的にそれまでを振り返る良い機会になりましたし、自分の今後の役割的なことは何なのだろう?ということを考えだしたキッカケにもなりました。

会社員がリモート勤務をする、もっと拡大解釈をすると、場所に縛られない働き方をする、という事は、ワークスタイルの選択肢として今後も増えていくでしょうし、実際にそうなっていけば幸せになる人たちも大勢いると思っています。私もそのような人たちが一人でも増えるように、微力ながら応援していきたいな、と考えております。実はこの記事も、札幌市南区豊滝にある農場の一角を「コワーキングスペース」としてお借りして、パソコンを持ち込んで書いているものです(笑)

いいね!農style
そもそもこの試みは農場のご好意で場所をお借りできた、というのと、果たしてアウトドアで仕事ができるのか?という実験でもありました。もしかしたら世界初の試みかもしれませんが(笑)夏の暑さも通り過ぎた札幌で、自然の中で湧き水飲みながらお仕事、っていう世界が成り立つのか?といわれると、いくつかの前提条件が必要だけれども成り立つな、というのが結論です。まぁ、これは極端な例ですけれど、それほどたくさんの人に声をかけた訳でもないのに、結果9名も集まってしまったというのは、いったいどういうことなのでしょうかw
わかりにくいですが、みなさんお仕事中ですw


さいごに
13年半勤めた会社を辞める、というのは、やはりそれなりに大きな決断でした。しかし、これから自分が社会に対して果たして行くべき役割をもう一度考え直したときに、ここはやはりジョブチェンジをするタイミングだ、という結論に至りました。次はどうするのか、それはまた後日報告いたしたいと思います。これまで仕事上お世話になった皆々様、この場を借りて、あらためて感謝申し上げます。本当にどうもありがとうございました!!

2014/04/17

AWS Elastic BeanstalkはImmutable Infrastructureそのものじゃないか はてなブックマークに追加

ちょっと遅くなってしまいましたが、第13回 JAWS-UG札幌 勉強会で発表してきましたので、ご報告いたします。なお、今回でこのシリーズは完結いたします(笑)



ちなみに先月の JAWS DAYS 2014 では、Immutable Infrastructureのトラックが常に超満員でして、通路にまで人が溢れおりました。また、東京方面ではImmutable Infrastructure Conferenceが開催される位、ちょっとしたイミュータブル祭りになっているようです(笑)しかし、その中であまりAWS Elastic Beanstalkについて話題が出てこない気がしたので、今回あえて発表させてもらいました。

まだサーバーにSSHでログインしてるのかい?

AWS Elastic Beanstalkは、まさしくBlue Green Deploymentをするためのサービスですし、そもそもEC2起動時にkey pair指定をしなくても良い=サーバーにログインしなくてもいいんじゃね?という事実が、イミュータブルっぷりを発揮しております。
※ちなみにスライドにもある通り、個人的にはkey pairを指定していますw でも個別のサーバーにSSHでログインする機会は滅多にありません。

Elastic Beanstalkがリリースされた2010年当時は、このkey pair指定をしなくても良い、という意味が全く分かりませんでした。当時はconfigで環境を自動構成する機能(公式ドキュメント)もなく、カスタムAMIをあらかじめ準備する必要がありました。しかし、カスタムAMIを作るという事は、そのAMI自体を管理して行かなければならない、という別のタスクが発生します。例えば、先日のHeartbleed Bugのような重大なセキュリティの問題が発生した場合、そのソフトウェアを最新版に更新した上で、再度AMIに保存し直す、といった作業が発生します。管理すべきものを増やしたくないのに、これでは本末転倒です。Chefなどのプロビジョニングツールも良いのですが、そこまで大げさじゃないんだよなぁ、という場合、このconfigがちょうど良い感じなんです。

ちなみにconfigではスクリプトも実行出来ちゃいます。ということは、要するに何でも出来るのですが(笑)configでは書ききれずにスクリプトを書いてしまう場合は、無理してElastic Beanstalkを使わずに、別のソリューションを使った方が良いと思います。(【参考】EC2 インスタンス上のソフトウェアのカスタマイズ

インフラの構成管理をある意味強制される

基本的にconfigはアプリケーションのソースコードの中に入ります。具体的には
$APP_ROOT/.ebextensions/*.config
という場所に入りますので、基本はgitやsvnなどのソースコード管理システムの中に一緒に放り込まれるでしょう。そうすると、インフラの構成もバージョン管理されてしまうという・・ まさにDevOpsな世界が自動的に出来上がりますw AWSはこの点を意識しているのかどうか・・よく解りませんけども、個人的には良く出来ているなぁ、と思います。

運用のベストプラクティス?

Amazonの長年の経験で培ってきたものがAWSにあるとすれば、まさしくサイト運用のベストプラクティスが詰まったものがElastic Beanstalkなんじゃないか?と思います。他のサービスに比べれば地味でパッとしないかもしれませんけども(笑)使いどころを間違えなければ、Elastic Beanstalkは初期学習コストも異様に低いですし、サイトの運用負荷を劇的に下げられる強力なサービスだと思います。

2014/02/13

リモート勤務は手段であり目的ではない〜「強いチームはオフィスを捨てる」を読んで はてなブックマークに追加

読書感想文シリーズ、その2です(笑)

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」
ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン
早川書房
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すでにあちこちでレビューされているこの本ですが、これはリモート勤務歴2年4ヶ月の自分にとって必読の書(?)であり、ましてや以前はRuby on Railsのお世話になっていましたので、頑張って感想文を書いてみたいと思いますw

これはリモート勤務の本ではない

っていうか、いやいや、そんな事はなく、37signalsが自ら実践してきたリモート勤務について、とても歯切れよく、わかりやすく書かれた良著です。これからリモート勤務を導入したいと思っている個人や組織にとって、大変に説得力のある文章がたくさん詰まっていますので、読むべき一冊だと思います。もし、自分がクラウド移住をする時にこの本があれば、どんなに助かった事だろうな、と正直思います(笑)。この本に書いてある事、多かれ少なかれ、自分が通ってきた道が書いてあって、「あー、間違ってなかったー。やっぱそうだよねーw」的な思いで一気読みしました。

ただ、読み終えた自分の第一印象は、「これは(究極には)リモート勤務の本ではない」という事でした。

この本にも書いてある通り、仕事の質を上げ、かつ、個人の満足度もアップさせるための「手段」としてのリモート勤務は、すでに充分に出来る環境にあります。ただし、リモート勤務をする事が目的ではありません。目的と手段をはき違えてはいけません。

強いチームであるには

この本では、散々「コミニュケーション」について触れられています。一人で全てをやっている訳ではありませんから、当たり前なんですけど、リモート勤務の場合はむしろそれを意識的にやる必要があります。これは自分の実感から来るものでもあり、とても賛同出来るものです。ただ、これは、リモート勤務当事者だけの問題ではなく、一緒のチームで働いているオフィス勤務の人間にも言える事、というのが、意外に解りにくい部分でもあります。

例えば・・よくあるのがSkypeなどのWeb会議で話す時に、顔を映さない人。これが非常にやりにくいです。向こうはこっちの顔が映っているから別になんとも思わないのだろうけれども、これでは普通に電話で話した方が数倍マシです。ただ、こういった事は自分がリモート勤務を始めた頃にはあまり無かった事であり、何でなんだろうと考えてみましたが・・おそらく自分は本社にいない、という事に、本社側がすっかり慣れてしまった結果なんだと思います。

ほんと、しょーもない事なんだけれども、そのような事が積み重なってくると、だんだんコミュニケーションを取る事自体が「ストレス」になってきてしまう。それでは全く意味がありません。でも、よくよく考えてみると、じゃぁ常にオフィスにいれば、そこは大丈夫なのか?という疑問が沸々とわき上がってきます・・

皆さんの所でも、近くの人に伝えるべき要件をメールで済ましたりしていませんか?それで良い場合も多々ありますけど、内容によっては「メール送っておいたから後で見てね」くらい声をかけるのではないでしょうか?「メール送っておいた」というのが「相手に伝えた証拠」的な感じになってしまうと、そこから美しきすれ違いが発生致しますww

ただし、あくまで個人のコミニュケーションに対する考え方に寄る部分も大きいので、一概には言えない部分もあるでしょう。その点、四六時中オフィスに一緒にいて、同じ空気を吸っていれば「空気を読む」事によって知らず知らずに伝播させる事もある程度可能かもしれませんね・・ 実際、自分が出勤していた頃は、そこは無意識に感じ取れていた部分かもしれません。でも、空気はネットを超えられないので、長くリモート勤務をやっていると、その点が浮き彫りになってきます。そして、そこがどうしてもうまく行かないのであれば、リモート勤務自体、不可能なのかもしれません。


けれども、それって本当にチームでしょうか?


原著のタイトルは「REMOTE -Office Not Required-」ですが、邦題は「強いチームはオフィスを捨てる」です。このタイトルをつけた人はスゴいと思います。まさしくそういった事を色々と考えさせられる、素晴らしい一冊です。