表題の通り、今月をもって
欧文印刷株式会社を退職することになりました。勤続約13年半です。最後の仕事は、先週行われたAWS主催のイベント、
「AWS ジャパンツアー 2014年 夏」での事例発表となります。
印刷会社が「独自開発」をする意味
印刷業界に長年いて、もっとも感じた事、それは
「ピンチはチャンス」という事です。印刷業界そのものは大変厳しい状況にあります。従来の印刷需要そのものがどんどん無くなっていく現実があり、基本的に今までの事をそのままやっているだけでは衰退するだけです。この現実に対してどう乗り越えていくべきか。自分が所属していた欧文印刷は
「自力で独自開発」を行う、という方針を打ち立てました。世の中に存在していなかった新しいモノやサービスを作りあげ、新しい市場を切り開いていく、というものです。そして、それはある程度、結果に出すことができました。
例えば、おかげさまで大変ご好評を頂いている商品「
nu board(ヌーボード)」がその代表です。
印刷工場の担当者が、ルーチンワークとして「機械を回す」ということで終わっていれば、このような「紙をホワイトボードにする技術」なんて絶対に生まれていません。どれだけ安く、早く機械を回すか?という考え方は、製造業的には基本的な考えでありますが、そこだけに注力して体力勝負になってしまうのは得策ではありません。なぜなら、基本的に需要そのものが減っているので、必然的に価格競争に陥るからです。
しかし、現実問題「言うは易く行うは難し」というのも事実ではあります。そもそも「独自開発」というものは、すぐに効果があるものでもないですし、ましてや開発に失敗するかもしれません。しかし、欧文印刷はそこに価値を見いだして、現場のエンジニア(アナログもデジタルも)をサポートしてくれる会社です。そういう中で仕事をさせてもらった事は大変恵まれていました。自分自身、エンジニアとして成長をさせてもらった事に、大変深く感謝をしています。
印刷とWeb
私は印刷会社の中のソフトウェアエンジニアとして、いろんな事を手がけて参りました。そこを語りだすといつまでも終わらないのでやめておきますが(笑)やはり欧文印刷での仕事の中で、最も自分を成長させてくれたのが、
ブログ製本サービス「MyBooks.jp」に携わった事です。このサービスの立ち上げから成長まで、当事者として8年間関われたことは、大変貴重な経験でした。ある意味、自分の子供みたいな気持ちです(笑)
本当に何もない所から、ただ「ブログは本になるんじゃないか?」という発想で始めたこのサービス、まさか国内の主要なブログと提携させていただき、かつサービス自体が8年も続くとは、当時は全く想像もしませんでした。これもサービスを使っていただいているお客様のおかげです。本当にありがとうございます。MyBooks.jpは、もちろん今後も継続的に発展して行きますので、乞うご期待です。
たかだか「ブログを製本する」と一口に言っても、本当に沢山の事が「前例のないケース」で、全てが手探りの状態でした。ブログデータをPDFに変換する組版エンジンの開発、写真などの収集、最適化技術といったものは当然として、Seasar2やRuby on Rails、Flexなど、その時代にあったWebフレームワークを積極利用したり、途中から「Amazonクラウド(AWS)」を利用して、一番のネックだった「サーバーインフラ」の問題を一挙に解決できるようになったパラダイムシフトを経験したり・・とにかく様々な経験をさせてもらいました。
しかし、MyBooks.jpは「製本サービス」です。つまり、印刷して製本して配送する、という製造の行程があります。私はシステムの担当であるので直接はタッチしておらず、これまであまり表立って話もしてこなかった事ですが、こちらも全てが初めての事でしたので、本当に大変だったと思います。そもそも当時は業界の常識として「
本を一冊だけ印刷製本するなんてのはあり得ない話」でありました。ましてやB2Cサービスですから、受注数の変動も激しいので、そこをいかにして回していくべきか、今までの「常識」を全て覆さなければ到底なし得ない事をやってのけました。欧文印刷のオンデマンド製造部門は相当すごいですよ。ここまで一点一様のものを毎日大量に生産している印刷会社は無いと思います。
リモート勤務というワークスタイル
そして、やはり言及しなければならない事は、リモート勤務を認めていただいた事です。考えてみたらこれも「前例のないケース」ですから、欧文印刷がそもそも持っている風土にあっていたのかもしれませんね(笑)
リモート勤務開始は2011年の11月ですので、もうすぐ3年経ちます。その中で、MyBooks.jpのシステムリニューアルや、
mixiさんとの連携によるサービスのヒット、なんて言う事がありました。どれも大変思い出深い出来事です。
リモート勤務の事に関してですが、ここにきて少しずつ認知度が上がってきたなぁ、という感じがします。実際にイベント等でお会いした方に「話を聞いてこういうワークスタイルを知った」と言われる事もありますし、中には実際に行動に移されてリモート勤務をやってます、という方もいらっしゃいました。これは個人的にもとても嬉しい事ですし、いろんなところでお話をしてきてよかったなぁ、と思うところであります。
特に思い出深いのは、2013年初頭の「
エンジニアサポートCROSS 2013」と、同年10月の「
北海道の楽しい100人」に登壇したことです。前者は
ASCII.jpさんに記事にしていただいて結構な反響をいただきましたし、その後IT系に限らず、様々なイベントや勉強会、メディアの取材等をいただいたきっかけとなりました。後者は、
クラウド移住してきて2年が経過したタイミングでのお声がけで、個人的にそれまでを振り返る良い機会になりましたし、自分の今後の役割的なことは何なのだろう?ということを考えだしたキッカケにもなりました。
会社員がリモート勤務をする、もっと拡大解釈をすると、場所に縛られない働き方をする、という事は、ワークスタイルの選択肢として今後も増えていくでしょうし、実際にそうなっていけば幸せになる人たちも大勢いると思っています。私もそのような人たちが一人でも増えるように、微力ながら応援していきたいな、と考えております。実はこの記事も、札幌市南区豊滝にある農場の一角を「コワーキングスペース」としてお借りして、パソコンを持ち込んで書いているものです(笑)
いいね!農style
そもそもこの試みは農場のご好意で場所をお借りできた、というのと、果たしてアウトドアで仕事ができるのか?という実験でもありました。もしかしたら世界初の試みかもしれませんが(笑)夏の暑さも通り過ぎた札幌で、自然の中で湧き水飲みながらお仕事、っていう世界が成り立つのか?といわれると、いくつかの前提条件が必要だけれども成り立つな、というのが結論です。まぁ、これは極端な例ですけれど、それほどたくさんの人に声をかけた訳でもないのに、結果9名も集まってしまったというのは、いったいどういうことなのでしょうかw
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わかりにくいですが、みなさんお仕事中ですw |
さいごに
13年半勤めた会社を辞める、というのは、やはりそれなりに大きな決断でした。しかし、これから自分が社会に対して果たして行くべき役割をもう一度考え直したときに、ここはやはりジョブチェンジをするタイミングだ、という結論に至りました。次はどうするのか、それはまた後日報告いたしたいと思います。これまで仕事上お世話になった皆々様、この場を借りて、あらためて感謝申し上げます。本当にどうもありがとうございました!!